海外でハプニング!パスポートを忘れて野宿しかけた話②

海外失敗談

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パスポートを家に忘れて出張先へ来てしまった話の続きです。

前回のお話は下記から。

バスターミナルへ

次にトライしたのが、航空会社のスタッフからも教えてもらったバスで帰国する方法だ。陸路で繋がっているヨーロッパ大陸は高速バスも豊富だ。私も何度か使ったことがあるし、実は数年前に1人でチェコ旅行をした時に、チェコ国内ではあるが長距離バスで移動したことがあるので、バスターミナルの場所も把握していた。

空港でスマホから検索したところ、ドイツに行く夜行バスがあった。22時頃にプラハを出て、朝にはドイツに帰れるから、しんどいけど、これなら明日の出勤も普通に可能だ。値段もとても安い(確か20ユーロもしなかったと記憶している)。ネットでチケットを予約し、取り合えずバスターミナルがあるプラハの中心部に向かった。

2月のプラハはとても寒かった。少し前に降雪があった様で、雪が道路に残っていた。日帰り出張のつもりで来ているし、移動もタクシーや電車だけなので、私の服装はウールのコートは着ていたものの、スカートのスーツに足元はハイヒール、薄手のタイツ、とビジネス仕様で、雪の中を歩く様な服装ではなかった。

19時ごろにはバスターミナルに到着したが、出発までまだまだ時間はある。一旦乗り場を確認し、取り合えず空腹を満たそうとターミナルの外に出た。バスターミナルの周りには飲食店等はそれほど多くないが、また長距離を移動する気力もない。チェコの伝統的な料理やビールを食す気分でもなかった。実は不安にもかなり包まれていたから、とにかく温かくて安心できるものが食べたかった。

中華風の提灯の明かりがかなり遠くからでも確認できた。あれは中華料理屋に違いない。欧米の食事に飽きれば中華を食べる日本人は多いと思うが、私は中華圏に長く住んでいたので、人一倍中華が好きだ。中華なら温かいスープとか麺とかが食べられるだろう、と私は吸い込まれるようにその店に入った。店に入るとウエイトレスの若い中華系の女性に入り口近くのテーブル席に案内された。何年も経った今でもそのレストランの様子をはっきりと思い出すことができる。小さくも大きくもないそのレストランには数組の客がいたが、それほど混んでいるわけではなかった。欧米系の1組が話しながら、楽しそうに食事をしていた。

ウエイトレスの女の子は、私に中国人かどうか尋ねた。(アジア人あるあるだと思う。)私は日本人だけど、中国で勉強していたこともあると伝えた。「新年快楽」(中国語で明けましておめでとうの意。)と彼女は言った。私が驚いていると今日が旧暦のお正月であることを教えてくれた。私は中国語を勉強していたが、あまり欧米で中国語で会話したりはしない。(いろいろ説明するのが面倒だから。)でも挨拶すらろくに知らないチェコで途方に暮れた私は、とにかく誰かと話がしたかった。

今日が正月だと知ると孤独感と不安はより一層増した。家族が集まる正月に私は異国で身分も証明できずに何をやっているのだろう。でもウエイトレスの彼女も新年にも関わらず家族と離れた異国の地でアルバイトに励んでいる。(中国の地方都市から来たと教えてくれていた。)

頼んだのはワンタン麺だった。優しい出汁の効いたスープが冷えた体を温めてくれた。

レストランでゆっくりと過ごさせてもらったが、それでもまだ時間はあった。仕方ないので、バスターミナルの固いベンチで時間をつぶした。すると女性と男性の警察官が巡回をしてきた。バスターミナルがあるエリアはそれほど治安の良い場所でもなく、不法滞在者などがいないか確認しているのだろう。

こっちに来ないでと願ったが、彼らは私にもパスポートを見せるように言った。私は軽い感じで「今日は家に忘れちゃったんだ。」と伝えると、どこから来たのか聞いてきた。「日本」と答えると。「日本人か。OK。」と言って、去っていった。この時ほど、日本人であることに感謝したことはない。(先人の皆様、世界で良い行いをたくさんしてくださり、本当にありがとうございます!!)

ようやくバスの搭乗時間になった。バスの横には運転手とは別に制服を着たバス会社のスタッフの女性がいて、チケットを確認している。私はスマホにあるチケットを意気揚々と見せた。(早くバスに乗せて!)

チケットを確認した後に彼女は言った「IDも見せて」と。え?ここでもID必要なの?頭が真っ白になりながらも、私は写真付きの保険証を出してみた。「これじゃないわ。オフィシャルなやつよ。」と。仕方ないのでパスポートコピーを見せながら、今日の話を伝えた。彼女は「それは私には関係ないわ。でもバスの安全上、IDを確認する必要があるのよ。」と言った。国境を自由に行き来できてしまうヨーロッパは不法滞在者も多い地域なので、ID確認が必要なのは当然なのだろうと思いながらも、私は途方に暮れた。

プラハの夜

時刻は既に22時を過ぎていた。ドイツにいる上司や友人に連絡しても、今から動き出してもらえる時間ではない。もう誰かに頼んでパスポートを届けてもらうしかどうしようもないのかと思った。

でも鉄道はまだ試していないことを思い出した。調べてみると翌日の朝7時頃に、私の行きたい方向とは異なるのだが、プラハから北へ向かい、ドイツのドレスデンへ向かう電車があることが分かった。国境さえ越えてしまえば、通常はドイツの街中でパスポートチェックはないし、チェコで電車に乗ったことはないが、ドイツの電車ではパスポートチェックは見たことがない。(スイスやベルギーに行く電車には乗ったことがあった。)

明日、電車を試してみて、それでダメなら誰かに頼もう。そうは決めたが、取り合えず今晩どうにかしなければならない。寒いし、疲れているし、早く暖かい部屋で横になりたかった。

スマホで周辺のホテルを検索した。空いていないことはないが、そもそもパスポートがなくても泊まれるのだろうか。。。ホテルに宿泊するときは、基本的にはパスポートが必要になる。

ホテルサイトで今から予約したらキャンセルできない(返金はされない)から、取り合えずホテルのフロントに行って聞いてみよう。と思った。

近くのネット上で空きがあったホテルまで歩いた。時刻は23時を過ぎていて、本当に心細いし、うろついている人は酔っ払いだけだったり、たった5分くらいの距離だったが、何なら少し身の危険も感じるくらいだ。(良い子は旅先で夜遅くに一人で出歩かないでね!)

ネットで見つけたお手頃なホテルは外観ではホテルとは分かりにくいアパートの様な建物だった。中に入ると、ロビーは2階だった。手動の扉のついたエレベーターで2階に上がり、フロントへ行くと、厳格そうな中年の女性スタッフが座っていた。部屋が空いているか聞くと、空いているという。1泊泊まりたい旨を伝えると、やはりパスポートを求められた。コピーならあるよ、と言って出したけど、やはり原本がいるらしい。事情を伝えたけど、厳格そうな見た目の通り、やっぱりダメだった。

ホテルにも泊まれないのだろうか。外に出て、他のホテルも探そうと思ったけど、ダメだった時のことを考えてしまう。2月のプラハは寒過ぎて、ハイヒールにタイツのみの足元では指先の感覚もなくなってきてしまった。積もった雪の間の石畳を一歩一歩踏みしめながら、早歩きで次のホテルを目指す。

最悪、さっきまでいたバスターミナルなら朝まで過ごせるのだろうか。アジア人の女がそんなホームレスみたいなことして、安全でいられるだろうか。

漫画喫茶や24時間営業のファミレスもないし、ホテル以外でどこかないだろうか。そう言えば昔、夜に飲みに行って、帰りの交通手段がなくなった時に、24時間営業のマクドナルドで時間をつぶしたことがある。スマホで検索をしたら、少し離れたところに24時間営業のマクドナルドがある様だった。

最悪の場合は、マックへ行ってみようと思いながら歩いていると、検索していたホテルとは違ったのだが、「Motel One」というホテルの看板が見えた。ヨーロッパに多数ある格安ビジネスホテルチェーンなのだが、前に他の街で泊まった時に安いのに新しくきれいでなホテルで好印象だったのだ。「Motel One」の緑色の看板がその時の私には光輝いて見えたのだ。

吸い込まれるようにホテルに入ると、学生のバイトだろうかという若干頼りなさそうな若い男性のスタッフがにっこり笑いながらハローと挨拶をした。私も心を落ち着けて、にっこりしながら、「ハロー。今晩泊まりたいんだけど、1部屋空いてる?」と聞いた。「もちろん。空いているよ。」と言われたので、私は何も説明せずに「はい。パスポートコピー必要でしょ。」と言ってコピーを差し出した。彼は「あーありがとう。」と言ってコピーを受け取り、「じゃあここに名前と住所書いてサインして。」と言った。そして私のパスポートコピーをフロントにあるコピー機でコピーしていた。平静を装いながらも私は心の中で激しくガッツポーズをした。(「やったあ!これで暖かいベッドで休める!ありがとう!」)

部屋は広くはないけれど、セミダブルくらいの十分な大きさのベッドに白くてパリッとしたシーツがかかっている。掛け布団もふかふかだ。倒れこむようにベッドに入り、これで休める!と思いながらも明日のことが気になり、夜中に何度も目が覚めた。

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